東京・府中市の広報紙を考える ~広島県広島市との比較~

前回に引き続き、東京・府中市の広報紙『広報ふちゅう』を全市民・全世帯に確実に届けるために検討すべきことを考えてみます。

今回は私、事務所スタッフがかつて暮らしていた、広島県広島市の広報紙と比較します。広島市は人口が100万人を超える政令指定都市ではありますが、府中市が参考にしても良さそうな興味深い試みを行なっています。

広島市の広報紙は『ひろしま 市民と市政』というもので、毎月1日と15日(月2回)発行されます。ページ数は平均8ページほどで、毎号フルカラー印刷となっています。今回、2015年12月1日号を貰うことが出来ました。

今回の号には「区」の広報ページもありました。貰った場所が広島市中区でしたので、『区報なか』が入っています。ちなみに、広島市には8つの区があります。

配布は新聞折込を基本としており、市内の公共施設でも配布されています。新聞を購読していない世帯には郵送も行っています。

上記のリンク先からはpdfファイルで紙面を見ることが出来るだけでなく、音声による広報を聞くことも出来ます。

では、ここで府中市と比較してみます。

まず、発行回数は府中市が月3回、広島市が月2回となっています。ページ数はどちらも1回平均で8ページほどなので、1ヶ月で見ると、単純計算ですが府中市の方がページ数が多いと言えます。

ただ、『広報ふちゅう』が白黒ベースで緑色の挿し色で構成されていることを考えると、『ひろしま 市民と市政』のフルカラー印刷は視覚効果が非常に高いと言えます。コストは高くなれど、それが決して悪いとは思いません。

2015年9月の「府中市 市政世論調査」において、「(広報紙の発行は)月2回でもよい」と答えた方が半数以上を占めたことを考えると、広島市の配布回数は適切なのかもしれません。

次に、配布方法は府中市・広島市ともに同じでした。府中市でも希望する世帯に個別で配布を行っています。しかし、広島市の最も凄いところは「広報を設置している公共施設」にあります。

府中市では、市役所や文化センター、鉄道各駅、コンビニエンスストアに設置しています。広島市でもこれらの場所に設置していますが、加えて、郵便局や銀行、スーパーや病院などでも入手することが出来ます。

実際に、写真の『ひろしま 市民と市政』は、スーパーで手に入れました。フリーペーパーの棚と同じように特設の棚があり、自由に手に取ることが出来ます。

先ほど、ひと口に「コンビニエンスストア」と書きましたが、府中市はファミリーマート限定です。市の施設や鉄道各駅、ファミリーマートさえも無い北山町や西原町では新聞購読が頼みの綱です。

広島市の場合、全店と言う訳ではありませんが、ファミリーマートだけでなく、ポプラやデイリーヤマザキなどでも配布されています。スーパーも対象店舗が非常に多く、発行部数もかなり多いことが推測されます。

個人的に好感を覚えるのは、郵便局や銀行、病院でも設置があることです。これらは待ち時間が長くなりがちな場所で、その合間に読めるのは非常に良いことだと思います。

特に病院は、待合室だけでなく、病室で読むチャンスがあることを意味していると思います。「新聞は取っているものの入院中で読めない」と仰る方にも役立ちそうです。対象施設は是非とも増えてほしいものです。

設置施設が増えることで全世帯に行き届くとは限りませんが、市政を知る権利のための間口を広げるという点で、広島市の試みは高く評価出来るでしょう。

府中市のpdfファイルは全ページを一斉にダウンロードするものとなっています。2016年発行分からは電子書籍化し、実際にページをめくるような感覚で読むことが出来ます。

一方、広島市では1ページごとのダウンロードとなっています。逐一ダウンロードするのは面倒かもしれませんが、必要なページだけを見る時には便利です。その分、容量も軽くなります。

そして、広島市では「音声」で視覚障害者に寄り添う試みも行なっています。視覚障害がある方にも「市政を知る権利」は当然あります。府中市にもこのような配慮は必要でしょう。

視認性・可読性の面でも広島市の紙面は考えて作られている印象があります。ごく一部のタイトルで縦書きが見られるものの、基本的に横書きで統一されているからです。府中市や呉市では混在が見られました。

以上、府中市と広島市を比較しての印象をまとめてみました。前回からの繰り返しになりますが、上記の方法が全て正解だとは考えていません。ただ、これからの広報紙のあり方を考える上での参考になればと思っています。

私がかつて暮らしていたと言う点から、前回は呉市、今回は広島市を例に取って府中市との比較を行いました。他の自治体でも興味深い試みがなされているかもしれません。

その中で「これは良い」「これは市民のためになる」と言ったことを上手に吸収し、市民の皆様に還元していくのが最善ではないでしょうか。

府中市のやり方も、まだまだ検討の余地がありそうです。