地方議会選挙と憲法

 2023年4月16日から府中市議会議員選挙が告示され、同月23日(日)が投開票日となります。

改めて、市議会議員選挙が行われるにあたり、その意義を考えてみたいと思います。

 都道府県や市町村は地方公共団体と呼ばれています。私たちの生活に最も身近な行政や議会は地方公共団体である府中市です。

 今回行われる府中市議会議員選挙は何に基づいて行われるのかというと、日本国憲法の第93条が基になっています。

第93条「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
② 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員(りいん)は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。」

 この第93条によってより具体的に規定されているのか地方自治法という法律です。地方自治法第89条に「地方公共団体に議会を置く」ことが義務付けられ、その要件や権限等については第90条から第138条にかけて明記されています。

 憲法や法律で決められているから選挙を行うといえば、確かにそうですが、なぜ選挙を行うのかという事を考えなくてはなりません。

 議会なんて必要ない、私の生活とは関係ないと思う方も少なくないと思います。本当にそうでしょうか?

 普段、何気なく使っている道路を考えてみましょう。行きたいところへ行くには道路が必要です。安全に安心して使える道路になっているでしょうか。

 また水道や下水道は毎日使うものでもあります。安全に安心して飲める水道や衛生的な下水処理は私たちの生活に欠かせないものでもあります。

 税金についてもそうです。皆さんが納めている税金は、どのようなものに使われているでしょうか?生活に支障が出て困ったときに使えるようになっているでしょうか?

 子育て、教育、高齢者、障がい者、生活困難など、行政が担うサービスは多岐にわたっています。府中市の一般会計の約半分はこうした民生費と呼ばれるものです。

 万が一、自分の生活が苦しくなった、大変になったという時にセーフティネットの役割を果たすのが行政であります。この根底には、日本国憲法の第13条「個人の尊重」と第25条の「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障されているからです。

 同時に行政は様々な権力があり、住民も納税義務を負っています。その権力が正統性、公平性をもって行われているかどうかを住民がしっかりチェックしなければなりません。公平性があるといっても、一人一人の生活状況には違いがあり、しゃくし定規に物事を判断していいかどうかという問題もあります。住民自治の重要性がここにあります。

 住民自治とは、住民が単にお客様としてではなく、自らもまちづくりや地域社会に参加し、ルールや行政サービスを決めていく事が基本となります。

 しかし、複雑化、多様化する今の社会には、一人一人の住民が行政のすべてをチェックすることは大変難しい時代です。そこで、選挙を通じて住民自治の代表者を議会へ送り出し、行政の様々な活動や府中市のルール、予算、人事、条例等を決める事が必要になるのです。

 選挙は単に議員を選ぶだけのものではありません。その先にある未来を、どのようにして創っていくか、選ぶのかを考える大変重要な機会です。

 仮に投票権がない社会を考えてみましょう。納税の義務だけ負って、その納税額を決める人を選ぶことが出来ないとすれば、民主主義とは言えません。

 「代表無くして課税なし」という言葉がありますが、これは議会に代表を送る権利のない植民地の人々に対して、一方的に課税するのは不当であるという意味です。

 今月に行なわれる府中市議会議員選挙には、ぜひとも関心を寄せ、投票を通じて住民自治に参加しましょう。