少子化対策は労働問題
今年に入って岸田首相は「異次元の少子化対策」を推進すると記者会見で発表された。
今の社会のいたるところで人材不足といわれ、労働者人口の将来的な見通しや年金生活を送る高齢世帯を支える世代の屋台骨が危うくなっている状況は、10年以上前から言われていた。民主党政権時代には、少子化対策の一環として子育て支援策である「子ども手当」「高校無償化」を実現してきましたが、それらをことごとく否定してきたのが今の自民党である。
アベノミクスで格差が広がり、子どもを育てる経済的な余裕もない世帯が続出し、将来の希望も持てない状況にしてきた結果が、今の社会。目先の出産費用や児童手当、出産・育児休業ができると言われていても、その先の将来が見えない時代に、子どもを犠牲にしたくないと考える若い世代は少なくない。
安心して子供を産み育てられると思えるには、まず安定した仕事と収入の確保が必要である。子育て世代の20代から40代で、非正規雇用の割合は約20~25%となっている。この層の方々にとって、子どもを産み育てること自体が、ある意味で夢の生活であるかもしれない。
そう考えると、やはり賃金の底上げは、少子化対策の延長線上として捉えることができる。東京では最低賃金時給1072円だが、普通に働いて一日8時間、週40時間、ひと月160時間として計算してみると、171,520円である。これで、憲法で掲げる健康で文化的な生活の確保は非常に厳しいと言わざるとえない。ましてや、子育てするとなると、この最低賃金で夫婦共働きで生活すると収入は343,040円となるが、家賃や光熱水費、国保や年金、食費やレジャーなどを入れると平均で32万円かかるといわれている(総務省、家計調査年報2019)。
これでは、子どもを産み育てるまでの余力がないことは、明らかである。せめて最低賃金を時給1,500円に上げれば、単純計算で一人24万円、2人で48万円となり、子どもを産み育てる経済的な余力は出てくるだろうと推定される。
しかし、実際には子供を産むにあたって配偶者の女性は産休を取ったりするため、経済的に所得が下がり、生活が苦しくなるのは目に見えている。今、行うべき政策は、単に子育て支援としての児童手当を引き上げる事ではなく、まずは最低賃金を時給1,500円に引き上げ、さらに配偶者の出産による仕事の休暇の所得補償と出産費用の免除、そして子供を育てるための住宅の確保が保護者には必要である。
少子化対策を行うのであれば、それぐらいの事を考えて施策を展開しなければ、少子化の歯止めにならない。さらに、子どもが大きくなるにつれて経済的負担も大きくなるので、親の所得を増やすことも必要である。そのためには、インフレに対応した賃金アップのみならず、仕事で得た経験や知識に所得がプラスになれるようにしていかなくてはならない。
子育てをしていくには、お金だけがすべてではない。しかし、子育てする親の所得は、子どもにとって大きな影響が出てくる。やはり所得は収入、収入は賃金、賃金は労働問題である事をしっかりと踏まえて、対策を講じることが必要だと強く感じる。