議員の責務を考える

 令和3年第4回市議会定例会では、市民からの陳情で内容が非常に近い2つの案件がありました。

 陳情第13号「沖縄戦戦没者の遺骨が混じる土砂を辺野古の埋立てに使わないよう求める陳情」と陳情第14号「沖縄戦戦没者の遺骨等が混じる土砂を埋立てに使用しないよう国への意見書提出を求める陳情」の2つです。

 違いは「辺野古」という地名が入るかどうかです。

 この2つの陳情が出た背景には、事前に陳情人から陳情に対する相談があり、府中市議会の状況や陳情判断の目安、陳情文書の文言の留意点等を打ち合わせておりましたが、陳情人が関わる団体内での調整が着かず、最終的には2種類の陳情が提出されました。

 市議会としては、提出された陳情に対して議会の審査に値する案件として、議会運営委員会で決定し、付託する委員会は総務委員会となったとの報告が本会議で諮られ、本会議で委員長報告を了承しました。

 私はこれらの陳情に対しては、元々沖縄の基地問題に深く関心を寄せて活動にも参加していたこともあり、賛成の立場で審議に挑んでいましたが、私が所属する市民フォーラムという会派代表の西宮幸一議員も総務委員会委員であるため、総務委員会の副委員長という立場から私の発言は、西宮議員に一存していました。

 12月3日の総務委員会では、陳情13号、14号のいずれも、挙手多数により採択すべきものと決定しました。

 通常であれば、委員会で決定した陳情を委員長が議員提出議案として政府に対する意見書を作成するのですが、全会一致ではないため、賛同した委員が作成し、本会議に図ることになります。

 本会議最終日である12月15日に向けて、委員会で決した議員提出議案を作成するのですが、この間、誰が議案の提出者になるか、文案は誰が作成するか等、様々な調整を要するのですが、なかなか総務委員会での審議後は動きが鈍かった事もあり、委員長や賛成した委員と打ち合わせながら、陳情第13号に賛成した意見書の提出は私から議員提出議案第9号を、陳情第14号は公明ふちゅうも賛成した福田ちか委員が議員提出議案第10号を提出することで何とか定例会最終日に間に合いました。

 そして迎えた定例会最終日。議員提出議案第9号の提案者である私が登壇し、補足説明を行ないましたが、反対意見の中には「辺野古」という文言が入ると、基地建設反対の意味合いが強くなるとの理由で、公明ふちゅうが反対し、26名中賛成11名で、賛成少数で不採択となりました。

 次に議員提出議案第10号では、公明ふちゅうの福田ちか議員が補足説明をし、賛否を図った所、賛成16名で採択されました。

 私は個人的には、どちらの意見書も、府中市議会として政府に対し意思表示を示す事が大事であると思うので、議員提出議案第10号が可決された事は良かったと思います。しかし、問題だと思う点は、総務委員会で陳情に賛成した委員が、委員会で採択すべきと決定したにもかかわらず、本会議最終日に向けて積極的に議員提出議案を推し進める動きが無かったことであります。

 確かに、本会議の見通しでは、陳情第13号と議員提出議案第9号は、可決するには難しい状況でもありました。しかし、本会議当日に病気などで欠席する議員もいるかもしれません。見通しは駄目でも、当日までどうなるかは、その日にならないと本当にわかりません。

 これまで、府中市議会では政府への意見書を求める陳情を委員会で採択すべきと決定したにもかかわらず、本会議で議員提出議案を上程しなかった事が少なくとも2件ありました。平成20年第4回定例会での「陳情第14号 消費者行政の体制・人員・予算の抜本的拡充を求めることについての陳情」と平成27年第4回定例会の「陳情第13号安保関連法案の廃止を求める意見書を関係機関に提出することを求める陳情」でした。上記の2件は、それぞれ本会議で賛成少数で不採択となりましたが、議会のあるべき姿としては、委員会で採択すべきと決定したものをそのままにして良いはずがありません。これらは、私が市議会議員として在任中でもあったので、深く反省しなければなりません。市議会に提出される陳情は、一つ一つが市民からの切実なる想いが含まれている事を考えると、それに賛同した議員は最後まで、責任をもって取り組まなければと、改めて痛感しました。

「議員の責務をしっかりと最後まで果たす」

この言葉を胸に刻んで、これからも議会審議に取り組みます。